Fennesz_Rehberg_Bauer インタビュー 1998年7月4日
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1994年、オーストリアのウィーンでメゴが誕生した。中心人物はピーター・レーバーグ。設立以来、常に新しいタイプのサウンドを模索し続けてきた意欲的なレーベルだ。テクノの範疇を超え、いや、音楽の範疇をも超え、コンピューターサイエンスやアートにまで食指を伸ばし、完全に独自のカルチャーを確立している。残念な事にこのインタビューで話をしているレーモン・バウアーは音楽シーンから離れてしまったようだが……。しかし他の2人、ピーターとフェネスは、今もなお第一線で活躍し続けている。そしてエレクトロニカも電子音響も消えることなく存在し続けている。ちなみにMegoは2004年に EditionsMegoにリニューアルし、現在はピーター・レーバーグ1人によって運営されている。勿論、今も電子音響を語る上では外せないレーベルである。このインタビューは今から13年前、1998年の7月に行われたものだ。
※著作権について:記事を書いた本人、Carlos Pozoから翻訳記事の掲載の許可を頂いております。Tobias Fischerと、haus.0 / M.Muratから画像の使用の許可を頂いております。
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あなた方の音楽は、エレクトロアコースティックやミニマルの要素を取り入れて、最近のテクノと組み合わせたものですが、この展開は意図していたのですか?
ピタ:いいや。(笑) どうだろうね。ただ試してみただけだよ。俺たちは全員、音楽の世界での専門的なバックグラウンドを持っているわけではない。つまり単なる一般人ってヤツだ。エレクトロアコースティックの存在はソフトウェアによる部分が大きいと思うよ。あと、サウンドに対してはオープンな気持ちでいて、サンプルの使用を非常に重要視している。そういった部分が音楽を少々理論的なものに見せているんじゃないかな。理論的であることに興味はあるけど、あらかじめ考えてはいない。コンセプトはあるが。
あらかじめ考えるって部分はないという事は、感情にまかせているという事ですか?
フェネス:そうだね。
例えば、Aubeというアーティストは自分の周りにある全てをサウンドと結びつけます。音楽という言葉は、彼の中では存在していないのです。工業デザインを設計するように、音楽を“組み立てる”というか……。そういうのともちょっと違いますか。
フェネス:そういう事ではないな。
バウアー:音楽は音楽って認めているわけだし。
フェネス:だな。いろんな音楽に興味を持って、それらを混ぜてみた結果、ってところじゃないかな。
ピタ:俺達のパワーブックにはたくさんの種類のサンプルが詰まっていてね。その時の場所と、その時の自分の感情次第で鳴らすことが出来る。クラシックなサンプルが飛び出す事だってあるさ。テクノのエネルギッシュなビートが飛び出すこともね。全てがクールさ。サウンドをどう料理するのかは俺たちの勝手なわけだし。
バウアー:セットリストってガッチリ決まっている訳じゃないからね。その町その町でセットリストを決めるが出来るんだ。「この場所は、なるほど、こんな感じか。じゃあ今夜はこんな感じかな」、なんてね。マジの話だよ。
とはいえ、構成というものも存在しているんですよね?
ピタ:ああ。
セットの中にきっかけが仕込んであるように見えますが。
バウアー:その通り。純粋な即興ではないよ。
ピタ:最初と真ん中と、終わりにきっかけがある。きっかけの中にきっかけがあって、きっかけの……。
バウアー:これって……、一緒にプレイをする時は、ある特定のポイントをお互い探し出す。そして、お互いまたバラバラにプレイして、その後また特定のポイントで一緒にプレイする。そんな感じだよ。
昨日のライブについて感想をお聞かせ下さい。
ピタ:エクセレント。というのも、以前(ドイツの)ロストクで船上ライブをやったときは全く楽しめなかった,からね。でも、昨日の船上ライブはロストクの時とは完全に違った雰囲気だった。実に興味深い状況だったよ。
昔の作曲家からアイデアを拝借したりしますか? 昨夜のライブは少しの間ワグナーっぽい部分もありましたが。
ピタ:ああ、昨晩のライブはそうだな。俺とレーモン(バウアー)がアムステルダムのHolland Festivalでプレイした時、5枚組のCDボックスセットをもらってね。それは、Holland Festivalの過去50年のクラシックと現代音楽の演奏を収録したものだった。ワグナーのアイデアは2枚目から拝借したんだ。まぁなんというか……。
バウアー:……たまたまってヤツだよ。(笑)
ピタ:そう。偶然だ。でもやらなくちゃいけない使命でもあった。だからサンプルをアサインしまくったんだ。
メゴのゴールというものは設定してあるのでしょうか? 今後どう展開させていくつもりですか?
ピタ:自分が気に入ったミュージシャンの音楽をリリースしていく。それだけだな。退屈なものがないとは限らないが……。
バウアー:思いっきりオープンな状態でいるわけだしね。これから先50年間も従わなくちゃいけない音楽的制約なんてものはないさ。今後のことはあくまでも俺たち次第だ。
ピタ:メゴに送られてくるデモテープって、グリッチノイズとかそんな類のものでね。皆、「この音源はメゴレーベルに最適だ」なんて言うんだが、俺たちに言わせれば「そんなのもうやっちまったよ」ってところなんだよな。
バウアー:ついこないだはあるフットボールチームのファンクラブのシングルをリリースしたよ。で、メゴの次のアルバムはさ、“聴く”というよりは“見る”ってヤツかな。
ピタ:あれ、とても低音が効いているよな。
バウアー:ネガティブなアイデアと、とてつもない“テクノロジー”で出来た作品でね。Fuckheadってパフォーマンスグループの事さ。過激なパフォーマー達なんだ。あと、クリスチャン(フェネス)が7インチの限定盤を出す予定だ。カヴァーが2曲入ってるヤツ。1つはRolling Stonesでもう一つはBeach Boys。……っていうか、原型を見つけることは出来るかな。
あなた方はメゴの音楽の方向性を真剣に考える一方で、ユーモアのセンスも持っていますよね。
ピタ:ああ、真面目に楽しんでいるんだ。
フェネス:重要なことだね。
例えば、Ovalは自身の音楽に対してとても厳粛で、格式を重んじているように思えます。しかし、あなたたちの場合はなんというか……。
ピタ:ポップス路線と伝統主義路線の間の微妙なラインを行き来しているよな。紙一重だよ。実際、アカデミックな分野にはとんでもなく堅くて、ユーモアのセンスが全くない人がたくさんいるんだよ。ユーモアはとても大事だと思うんだがね。特にブラックユーモア。イギリス人である俺はとんでもない皮肉屋なんだぜ。
バウアー:ピタのユーモアのセンスはオーストリアンジョークにそっくりだよ。
フェネス:俺も伝統主義路線とポップス路線の間の微妙なラインってヤツに興味津々だ。それって音楽に対してとても重要な事さ。俺はそう思うよ。
バウアー:ポップのジャンルに属したいわけでも、伝統主義者でありたいわけでもなくてさ、それらの中間に興味があるんだよね。
フェネス:両立は可能さ。
以前あなた方が言っていたように、たくさんのレーベルがメゴに続いて出てきています。それらの新興レーベルと提携してやっていこうとは思っていますか? 例えば、A-musikやMille Plateux、あとTouchとか。
ピタ:Touch はパートナーだよ。A-musikはメゴと同時期に出来たレーベルだ。目指している方向が似ているんだ。A-musikって小さい流通網の中でメールオーダーシステムを使って展開していてね。俺たちも似たようなやり方でやってるし、つながりがある。あと、オランダのStaalplaatとも日本の大阪にあるDigiともつながっている。そこらじゅうにつながりはある。皆、基本的にビジョンは同じだが、全部が全部同じという事ではないさ。当然出てくるものは違ってくるよ。じゃないと退屈だしね。あと、Mille Plateuxとはつながりが全くない。だからイラつく事もないね。(笑)
メゴはコンピューターサイエンスの最先端技術と、音楽と芸術を結びつけようとしているように思えますね。
ピタ:お互いの嗜好が違うし、バックグラウンドも異なるからね。俺はDJ上がりで、レコードの売ったり、集めたりなんかをやっていた。ティナ(フランク)はグラフィック・デザイナーでヴィジュアルの分野に興味を持っている。レーモンはミュージシャンでもあるが、経営の事にも興味を持っていて、ベルリンに住んでいるアンディ(ピーパー)はプログラマーだ。そういった全員のバックグラウンドが結びついて出来たレーベルさ。
あなた方全員がソロ活動も行っていますね。ソロ活動と他のミュージシャンとのコラボレート活動の違いを教えて下さい。
フェネス:俺の場合は……、ソロ活動というのはCDをリリースするって事かな。ライブでの即興も、ピタやジム・オルーク、レーモンとやるときほど多くはない。
ピタ:最高だった。
全て即興だったのですか?
フェネス:最終的には少しだけ変わったかな。
ピタ:10 日間で10回のショーだったんだが、全部即興だったよ。でも、5回目のライブあたりで気づいたんだ。このサンプルを鳴らすと、彼はこのサンプルを鳴らすとか、そういったことにね。だから“お約束”になったパートもある。まぁ.計画されていたことではないし、打ち合わせもしていないし、リハーサルもしていないけど。自然な流れでそうなったんだよ。
フェネス:どうするべきかって事を最終的に理解したんだよね。例えば、ピタがマドンナのサンプルを出してきたら、俺はこうしてみる……。
ピタ:……そうするとジムはジェームス・ボンドのサンプルを出してくるってね。(笑) 本当に楽しかった……。
バウアー:かなり“理論的”だ(笑)。
他にも計画している事はありますか?
フェネス:ああ、9月に別のツアーを予定している。オーストリア、スイス、それとイタリアだ。その時のライブをCD化してリリースする予定さ。どのライブもMDで録音しているんでね。
ピタ:聴いてふるいにかける必要があるが……。
フェネス:あと編集も。
どういったやり方で曲を作るのですか?
バウアー:まず、基本となるアイデアがあって、流れに任せて進んでみる。そうやって進めると、多くのアイデアが生まれたりハプニングが起きたりするんだ。これは個人的なやり方だけどね。勿論、基本となるアイデアから仕上げまで進めなくちゃいけないなんて事もない。だからこそ、いろいろなハプニングが起きる可能性があるんだ。完全に違う方向に進んじゃうことだってあるかもしれないしね。
ピタ:失敗って方向に進むこともね。
バウアー:ああ。ミスも大好きさ。(笑)
ピタ:悪い方向に進んでも、そのやり方を捨てるって事はしないな。古いサンプルの殆どは壊れていたり、まともに鳴らなかったりするけど、それはそれで面白い。コンピューターミュージックってヤツは、クリーンで、プログラムされていて、正確だからな。ちょっと汚い部分があるとクールになるんだよ。
冷蔵庫の音をレコーディングするというアイデアを思いついたのは誰ですか?
ピタ:俺。
バウアー:出来そうだからやってみろってピタに言ったんだ。そしたら本当に始めちゃってね(笑)。
ピタ:あれは友人のブルース・ギルバートも交えての飲みの席での会話だった。俺たちはたまにパブで長い議論を交わすときがある。そういうときに思いつくんだよ。全部が全部実現可能なアイデアではないが。でも冷蔵庫の音ってのはピンときた。生活に密着した音だしな。多くのアーティストは妄想の中で生きていて、現実世界に目を向けていない。冷蔵庫はサウンドになり得るさ。なぜ誰も使わないのだろうか?
町をぶらぶら歩いて、その時聞こえてきた音が興味深い音だったらレコーディングしてみる。そんな感じですか?
バウアー:サウンドってどれも環境音みたいなもんだからなぁ。「General Magic」で鳴っているサウンドだって、日常生活の中で聞くことが出来るものばかりだよ。ラジオを聴いている時、何か面白いサウンドが流れてきたら、それを拝借していろいろ試してアウトプットしたりもするしね。自動車の衝突の音からだって作ることは可能だよ。面白いじゃん。
再びAubeの話になりますが、Aubeは作曲と、自分自身の感情を完全に切り離していますね。音楽そのものに夢中になっている私には信じがたい事です。曲を作るときは、気持ちが入りますか?
フェネス:ああ。俺は自分の事しか言えないけど、感情に従うって事には物凄く大切な事だよ。自分の音楽から感情を切り離すなんて事はしたくないね。
ピタ:それって日本人とヨーロッパ人の違いがそうさせるんじゃないかなぁ。アプローチが違うというかさ。
ヨーロッパの人々はOvalと同じ道を歩むといったところでしょうかね?
ピタ:うーん、ヤツはドイツ人だろ。(笑) ドイツ人ってのは感情に流されることがないからなぁ。というか、感情ってもんがないんだよな。(笑)
フェネス:何も感情的で大げさであるってことを意味しているわけじゃない。ただ単に作曲に夢中になって音楽というものを楽しむって事だ。
ウィンドウズですか? それともマックですか?
バウアー:マックだよ。
フェネス:マック。
ピタ:俺も。
バウアー:ウィンドウズは他の作業のためだね。コミュニケーションや雑用とかね。クリエイティブでありたいのならマックだよ。ヴィジュアル、グラフィック、音楽。マックで決まりだね。
フェネス:ここ2年でウィンドウズも良くはなったけど。音楽用のソフトウェアも良いものがあるし。とはいえ、マックの方が使い勝手が良いけどね。
バウアー:そのウィンドウズの良いソフトっていじれないヤツだろ。俺たちが求めているのってオープンソフトウェアだからなぁ。オープンソフトウェアだと自分なりにいじれるんだ。ウィンドウズじゃあ現段階ではそれは無理だ。ベースラインマシンやヴォコーダーが使えないんじゃあね。
GUI上で使えるサウンドファイルを持っていますか? それは……
ピタ:変更がきくヤツさ。
フェネス:サンプラーみたいなものだよ。だからリアルタイムでパラメーターを変更できる。
ピタ:もう一つの機材って感じだよな。画面上にフェーダーやスイッチがあって、コントロールが可能なんだ。今って、そうやってコンパクトに1つにまとめられる。以前だったらシンセサイザーがたくさん積み重なっていたかもしれないな。
なるほど、もう何も加える必要はないんじゃないでしょうか?
ピタ:(The History of Fylkingenを指さしながら)この本が欲しい。(笑)
フェネス:俺はFylkingenでプレイしたいよ。(笑)
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